NHK HP 22016年5月14日、NHK Eテレ 「ウワサの保護者会」の番組制作に協力して、名古屋モスクに集う7人の中高生が2時間近くにもわたり、ISの事件による学校での反応、友達との関係、ムスリムで良かったこと、親に対して、親の自慢、ムスリムでない人に伝えたいことなどを語ってくれました。番組ではこのうちのほとんどが割愛されてしまいましたが、中高生の生の声を大事にしたいと考え、以下に引用します。

ISの事件による学校での反応
・ニュースでイスラム国って言うせいで、ISがイスラムの組織だと思われちゃって。やっている事はイスラムじゃないのに。それと同じ人達と思われちゃうから。だからもうテロリストだと思われていたりして、すごい辛い思いをしていて。違うって説明して分かる人と分からない人とそこで別れて。理解してくれない人はずっといじめみたいな感じで通りすがりに「テロリスト」って呼んだり。なんかそういう事をする人がいっぱい中にはいて。
・ISの件が出た時に、授業中みんなが私を見て、なんでそうなっているのとか言われて。私に聞かれても、私は関係無いから知らないし、テロリストと繋がっているんじゃないのかとか、俺達殺されちゃうとか、目の前で言われて、やっぱり傷ついて。その場しのぎでそんな事ないよとか言って終わったんですけれど。
・友達で、社会の授業でISの話が出たらしくて、みんなその子がムスリムって事を知っているから、「お前もムスリムだよな」「お前もあいつらと一緒じゃねーの」って言われて。授業が終わって、その友達がトイレに行って戻ってきたら自分の机と椅子が廊下に出されていて。鞄も全部廊下とかちょっと教室から離れた所に置かれていて。それをやったのがクラスの子たちで。何でしたのって聞いたら、「爆弾とか危険なものを持っているかもしれないから」って言われて。それに対して僕は友達の学校まで行ったんですよ、自分の学校が終わったあとに。その子だけじゃなくて、いろんな子にそういう事が起きているんで。同じムスリムの子たちに。
・私の弟の学校で、男の子たちがISの件でムスリムの女の子をからかっていて。小さい子はすごい素直だから思った事を正直にぶつけちゃうから余計苦しいんじゃないかって、その子もすごい泣いていて。その場に先生がいなくて、私がそういう事を言っちゃダメだよって言って、男の子たちも小さかったのでごめんねって言って終わったんですけれど。小さい子でもISの件でこうやって影響されるんだなって。子どもはテレビを見ているからすぐに言葉を覚えちゃうし、それが言っていいことか悪い事かまだ判断出来ない。やっぱりテレビで見たらみんな真似しちゃうから、すごいなと思って。
・僕も体育の時間のために体操服に着替える時があって、その体操服に着替える時に、ある子が自分の脱いだ服を顔に巻いて、こうやって。それで違う友達が、「わーイスラムだ、イスラムだ」って、笑い合ったんですよ。僕は見ているのがすごい辛くて。ISって言ったらまだいいけれど、イスラムって言っているから。イスラムと自分の信じている宗教のイスラムが結びついちゃうから。そこにいるのがいやだった。
・友達はいるんですけれど、一緒にいてもちょっと距離を感じたんですよ。ずっと長くいる子はそんな事は無いんですけれど、つい最近知り合った子とかがいたら、ちょっと「え?!」みたいな感じで。私の場合は授業中で話題に出ちゃったので、みんなが知っちゃって、一緒にいても話しかけてくれなかったりとか。自分もやっぱりそうなるとあんまり一緒にいたくないなって思ってきちゃって。自分からも距離を置いちゃうし、向こうからも距離を置いちゃって、結局その時1人になっちゃったりとかもあって。でも前から仲が良かった子とかが声をかけてきてくれて、元には戻ったんですけれど。
・ISが出たのが急すぎて。一気に来たから対応というか困って。周りからどう見られるかっていうのもまた1から考え直さないといけなくなったし、この先どういう目で見られるのかとか、すごい考えて。だけど1回落ち着いてゆっくり説明して時間かけて説明していったらみんな分かってくれたから良かったけれど、やっぱり出たばっかりの時はやばかったよね。
・まずニュースで何でこの人達がイスラム国とかISって言われているのか分からなくて、ただのテロじゃんと思って、全然イスラム関係ないじゃんと思って。何でイスラムって名前がついてるんだよって。
・ツイッターとかだと、まったく知らない人間でもそれこそISの件が出た時にすごい悪口を書いてて。なんか、「イスラム教徒全員出て行け」とか。「もう日本来るな」とか。そういう事を書いている、たぶん若い人がいて。それを見たくないけれどリツイートされて回ってきたりとかあって、そのリツイートした人が自分の友達だったっていう時のショックの大きさとか、そういうのが辛いし。見たくない情報も見ちゃって苦しんじゃって。遮断のしようがないよね。

友達との関係
・会ってすぐ自分で急に俺ムスリムだからみたいな事は言えないんですね。仲良くなって食事にどこに行くかってなって。そこで実は、みたいな感じで、自分がムスリムである事を言って、豚が食べられない事も全部話して。やっぱりそれを言うのもすごい内心ドキドキで、友情が崩れちゃうんじゃないかみたいな事もよくあって。その場で「あ、そうなの」みたいな感じで言われて、そこから連絡も来なくなったりしちゃうんですよ。理解してくれる人は、相手からどんどん「これは大丈夫なの」とか、すごい興味津々で聞いてきて、もっと理解を深めようとしてくれるんですよ。今の学校ではクラスほとんどがみんな理解してくれていて、ただ上の学年とか行くと、やっぱりバカにしてくる先輩とかもいて。その中で理解してくれる存在というのはすごい大事ですね。
・友達になったばっかりの人に自分がムスリムという事を言うのがやっぱり緊張して。やっぱり今の日本ってあんまりムスリムに慣れてないから、全然ムスリムの事知らない人もいるし。いくら仲が良くてもそれを言った事で、自分がムスリムという事を言った事で相手の態度ががらっと変わっちゃったり。やっぱり相手を前にするとこれってどうなるのかなって考えちゃって。すごい、頭の中でいっぱい悪い事を想定しちゃって。それで口に出せなかったりする事があって。言って相手の反応を見るまでドキドキで。怖くて。相手がもしこれでお前無理みたいになったら、すごいきついから。
・初めての人だとやっぱりどうしても言ったあとのその人の態度とか、その人の反応とかすごい気になって。いつ言おういつ言おうって決めても、でも言ったら向こうの態度が変わったらどうしようとか、この関係崩れたらどうしようとか、すごい変な事を想像しちゃって言えなかったりとか。ダメな時の場合を経験した事があって、言ったけれどじゃあごめん無理な事になった時に、すごいショックを受けたし。それを経験してからは本当にこの人もその時と同じだったらどうしようとか、やっぱり変な事をすごい考えて。
・あの時みたいになったらどうしようとか。やっぱり拒絶されたらすごい残るから。頭にも記憶にも。イスラムが広まってないうちにISが広まっちゃって。だからそっちの方が有名になっちゃったから。すごい嫌だ。本当に嫌だ。

ムスリムで良かったこと
・全部。
・すべて。
・バス停で、帰る時間になるとインドネシア人とかマレーシア人が結構群がっていて。そこにちょっと声をかけたいなと思って「アッサラームアレイコム」っていう挨拶でちょっと握手すると、あっちもすごい喜んで、「おお日本人が」とかって、それでちょっと会話して。あっちも喜んでくれて。だからこのアッサラームアレイコムって本当に短い言葉だけでまったく知らない赤の他人でも仲良くなっちゃうっていう事が本当にすごいと思います。
・一時期ISの件ですごい学校で1人になった時とかがあって、落ち込んでいたりすると土曜日に集まる時がみんな同じ状況でみんな一緒にいるから。みんなそういう苦しんでいる事を分かち合える人が、こうやってイスラム教徒の場で、いろんな事を共感してくれる人がいたり、分かち合ってくれる人がいるし、相談事とかも学校で出来ない事もここで出来たりとか。そういう相手がイスラム教徒でできるっていうのがいい事だなって。

親に対して
・みんな結構学校だと親の悪口大会とかだから。それを聞いているとなんでそう思うのみたいな。親を尊敬しろよって思うんですよ。
・学校で親が来る場面で、親が子どもに声をかけてきて、「何で声をかけてくるの」とか「やめて」とか言っていて、何で親にそんな事言うのって聞いたら、「うざいじゃん」って言われて。そう思うんだって思って。自分がそういう事を思った事が無いから。
・学校の人はひどい。お母さんに「まじ死ね」とか「くそババア」とかね。平気で悪口を言いまくるっていうのが。
・イスラムから愛とかを学んだっていうのがあって。親を尊敬しなさいだったり、いっぱいいい事が書いてあって。幸せに生きるために本当にイスラムを信じて、親も愛すっていう事があって。だから学校でも絶対に言わないし、そんな事も。家で言われて怒られたりしてなんだよってなる時もあるけれど、だけど落ち着いて考えてみると自分のために言っているなって思って。
・逆に自分が言わないと、学校でこいついい子ぶってるなみたいになっちゃう。
・マザコンってめっちゃ言われる。家族が普通に大好きだから。
・よく周りからも仲がいいよねって言われる。上にお兄ちゃんがいたりするとまったく喋らない家庭がほとんどで。うちはそんな事無いからよく喋るし。「何でそんな仲がいいの」って言われて、これが普通なんだけどなって思ったりして。
・「仲がいいね」はめっちゃ言われる。俺達は普通のつもりだけれどね。
・そういうノンムスリムの人と自分たちを比べると、やっぱり違いが見えてきて、その違いっていうのも悪い事じゃなくて、自分たちの方がいいという事が見えてきて、それですごい嬉しく思ったり幸せだなって実感したり。
・小4の時にいじめに遭って、不登校になった時にお父さんがずっとそばでもっと強くなれって言われて。お父さんも自分の経験を語ってくれて、それを跳ね返す勢いで生きていたって言われて。それを同じように生かそうと思って、堂々と生きて強くなろうと思って。お父さんがいなかったら今の自分は無かったって思うんですよ、よく。ずっとそばにいて信じてくれたのが多分1番良かったんだと思います。
・親の悪口を、怒られた時はちょっと思うけれど、そのあとすぐに親が悪いってそこまで思わない。正しい事を言っているって気づくから。
・だから言い返す理由が無いっていうのかな。言い返さなくても別にあっちが正しいからって。
・言い返している自分がまず間違っているという事を怒られている時に気づいちゃっているから。
・言い返したとしてもあとから絶対後悔する。時間の無駄って思えてくる。自分が反抗するだけ時間の無駄で。
・自分の思った通りにやっていると、あとから失敗したりして。あの時に親の言う事を聞いておけば良かったなって思ったりして。だから自分が失敗をしてもそれで怒られたとしても言い返さないし、言い返そうとも思わない。

親の自慢
・友達とか、親の悪口いっぱい言っているんですけれど、僕たちだったら、親の素晴らしい所、親のいい所を何分でも語れると思います、本当に。例えば、僕のお父さんは自分の弟とか自分の兄弟を尊敬していて、兄弟達のために頑張ってお金を稼いでいたと聞いて、自分の事じゃなくて兄弟の事まで考えているのはすごいなとか思って。いろんな所で尊敬しています。
・お母さんは家事も、お父さんの仕事のサポートも、あとは僕たち子どもとかにもいろんな事をしてくれたり、イスラームの事でいろいろ頑張ってくれていたりして。お母さんは寝る時間も削って食べる時間も削ったりして、本当に頑張ってくれているので、それはすごく尊敬していますね。すごいなって。
・お父さんは本当に何も日本語も日本の事もまったく知らずに来て、そこから自分の会社を作って、日本語もぺらぺらで。試練というか壁を乗り越えてまた今どんどん新しい事に挑戦していっていて。それだけじゃなくて自分の家族も養っているし、それがすごいと思うんですよ。自分のためだけに働いているんだったら尊敬も何も無いんですけれど、でもやっぱり家族のために働いてくれているから、それは誰もが尊敬しなくちゃいけないかなと思っていて。それプラス仕事だけじゃなくて、家族のために生きているみたいな感じなんですよ、僕たちから見たら。そういう所がかっこいいなと思うんですよ。自分の事よりも家族を優先して生きている感じがすごいかっこよくて。そういう所がすごく憧れていて。お父さんみたいな家族を幸せに出来るような人になりたいなって思っています。
・お父さんは最近海外でずっと働いている事が多くて。1年にも3ヶ月4ヶ月ぐらいしか一緒に過ごせなかったりとか。日本に帰ってきても、土日の休みも家族での出かける時間をすごい大事にしてくれて、よく週末とかだったらどこに行こうとかお泊まりでどこかに行こうとか言われるんですけれど、そういう所が自分の身体の心配より家族の事をすごい大事にしていて。自分の中でそういうお父さんがすごい憧れだから、男性の基準がお父さんみたいで。お父さんみたいな人がいいなとかすごい大事だなって思うようになりましたね。
・そのお父さんをすごいサポートしているのがお母さんだっていう事を、1番忘れちゃいけないなと思っているんですけれど。やっぱりそのお父さんも家族を養っていけるその理由がお母さんがいるから。お父さんは子どもの笑顔を見るために家に帰ってきて、その子どもを育てているのがお母さんで。子どもが何人とか関係なくて1人でも10人でも、やっぱり子どもをみるのはすごい大変だと思うし。自分だったら絶対に見られないと思うから。料理もすごいし、家事も頑張ってくれてるし。本当にそれがすごいと思っていて。多分自分だったら絶対に狂うような仕事を淡々とこなしているから、そこはすごい尊敬しています。
・お母さんがお父さん達と一緒に仕事に行って、一緒に帰ってくるのに、そのあとすぐに着替えてすぐにキッチンに入って晩ご飯の準備して。やっぱりそういうお母さんを見ていると手伝わなきゃなとか。忙しい所を知っているから。一緒にやって手伝ってあげて後片付けとかも一緒にやろうって思うようになる。
・多分この年頃だったらみんな「うちのくそババアがめっちゃうるさくて」みたいなこと言うと思うんですけれど。こんな感じでこうやってすごさを語れるから、本当にね、自分でもムスリムっていうことが誇りに思えますね。

ムスリムでない人に伝えたいこと
・これから先ムスリムはどんどん増えていくと思うんですよ、日本でも世界でも。そうすると今は身近にいなくても、将来大学とか行くと絶対周りに1人や2人はイスラム教徒の人がいると思うので、理解してあげて欲しい。周りに理解してくれる人間が1人いるだけでもすごい環境が変わるから。いやだった場所が理解してくれる人が1人いる事によって、自分にとって楽しい場所になったりするから。
・ISとかあの辺の人達と絶対同じじゃないです。決して危険だとも思ってほしくない。ニュースとかで流れている間違った表現に惑わされないようにしてほしい。同じ人間として、普通に仲良くなってほしいし。イスラームっていうだけですごいでっかい壁があるような感じだから。イスラームでもみんな同じ人間だし、豚を食べないとかってだけで、それ以外は全部同じだから。普通にふれ合ってほしいです。
・まだニュースでイスラム国って言っているせいで、普通の子もイスラム国っていうのめんどくさいからイスラムって言うんですよ。だからそれを聞いたムスリムの子は本当に傷つくし、距離も壁もできちゃうから。本当にもしその話題を出したいなら、ISとかダーイシュにしてほしいですね。本当にイスラームじゃないから。同じ単語を使ってほしくない。