ムジャーヒド松山洋平先生は、東京大学東洋文化研究所特別研究員および名古屋外国語大学非常勤講師をされている方です。「マイノリティのためのイスラーム法学」というタイトルで、ムスリムが日本で生きていく上での問題点をスンナ派神学・法学の観点からお話しいただきました。以下にその様子をお知らせします。
日時:12月19日(土)午後3時20分~4時50分
場所:名古屋モスク4階礼拝室
参加者:ムスリム約40名(2階での聴講を含めず)
講演の内容
・ウラマー(法学者)のアルワーニーが、非ムスリム諸国で生まれ生きていくマイノリティ・ムスリムのための「マイノリティ法学」を提唱。カラダーウィーやイブン・バイヤなど多くのウラマーからの賛同を受け、さまざまな問題に関してファトワー(法的見解、教義回答)が出されている。
・ファトワーの実例
①妻のみの入信と婚姻関係の継続
②「必要」を理由とした二つの礼拝のまとめ
③豚由来のゼラチン
・一部の法学派の見解では、イスティハーラ(性質転換)によってナジャーサ(汚物)の性質が消滅すると考える。
・日本のハラール認証に関する情報は、ほとんどがシャーフィイー学派に依拠している。あくまで一つの見解に過ぎない。
・シャリーア(アッラーの法)は普遍的だが、現実は変化している。問題が起きた時、正しいシャリーアの解釈は一般信徒には難しい。自己流の解釈では、どのウラマーも許容していない解釈になってしまう危険がある。信頼できるウラマーの説に従うことが重要。
質疑応答より
・自分が従う法学派をいずれか決めなければいけないのか
―一般信徒はどの法学派の見解に従ってもいい、問題ごとに従う法学派を変えてもいい、というのが多数派の見解。
・ファトワーをもっと知りたい
―カラダーウィーのファトワー集『マイノリティ・ムスリムのイスラーム法学』(日本サウディアラビア協会)が日本語で読める。英文のものなら、インターネットでも見つけられるのではないか。
・親によって異なる見解の子ども達が集まるところでは、解釈の違いでもめることがある
―私たちはウラマーではないので、誰かに「〇〇はいけない」と言うべきでない。異なる解釈であっても、どちらも有力なウラマーのファトワーがあることを認めて、お互いの考え方を尊重しあうべき。
・外国人夫がマジョリティ・ムスリムのケースしか知らないため、日本の慣習や教育問題などを理解できず、夫婦間で意見の対立が生じることがある
―夫に「柔軟な」ファトワーがあることを知ってもらう。
非ムスリム地域である日本で、日々さまざまな問題に対処する私たちにとって身近な関心事を、わかりやすくお話していただきました。これをきっかけに、イスラームをより正しく実践していけますように。
講演終了後、日本でカラダーウィーのような役割を果たしたいと言った高校生にムジャーヒド先生が、アズハル大学で博士課程を修了するようにと励ましていらっしゃいました。インシャアッラー、いつか日本でもウラマーが誕生して、日本のイスラームを導いてくれることを期待します。